2025/10/27 12:00
長く使っているハサミや筆記具。
少しずつ手に馴染んでいく感覚は、ものづくりの原点です。
私には、20年来使っている断ち切りばさみがあります。
テキスタイルデザイナーになりたての頃、会社から支給されたもので、
当時は置き去りになった裁ちばさみも併用していました。
年に一度研いでもらえるのですが、ある時から私は研ぐのをやめました。
研ぐと逆に切れなくなることがあったからです。
それ以来、この“研がないはさみ”が、私の手にしっくりと馴染む道具になりました。
不思議なことに、20年経った今もよく切れる現役のはさみです。
手の形に合い、感覚を覚えてくれているかのようです。

手に馴染む道具と向き合う時間は、
作る喜びや集中力だけでなく、心のリズムを整える役割もあります。
TAKARABAKO88で制作するジュエリーボックスや布も、
手に触れた瞬間に「あ、これ気持ちいい」と感じてもらえるように、
素材や形、質感のひとつひとつを選び、仕立てています。
20年使い続けたはさみと同じように、
手に馴染み、触れるたびに少しずつ愛着が増す。
そんな時間をお届けできたら――
それが私の願いです。
お気に入りの道具がある暮らしは、
ほんの少しの余裕や心地よさを生み出してくれます。
TAKARABAKO88の作品も、
毎日手に取るたびに心がほっとする、
そんな存在でありたいと思っています。
TAKARABAKO88 デザイナー 森田